筑波大学「結」プロジェクトとは
筑波大学「結」プロジェクトは超小型人工衛星を製作・運用する学生団体です.
まず「超小型人工衛星とは何か」「『結』ではどんな活動をしているか」をわかりやすくまとめた動画を用意しました.
難しい知識等は一切いらないので,ぜひご覧ください.
【筑波大学】「結」プロジェクト活動紹介 全体篇【学園祭2021】 - YouTube
先日,アメリカのSpaceX社が世界初の民間人宇宙旅行を成功させました.私たちからすると文字通り「雲の上」の人達の話に聞こえますが,これから先のそう遠くない未来では,より宇宙利用が盛んになっているでしょう.その上で,一般的な人工衛星は製作費用も高く,また高い技術を要求されるという面でも,新たな事業としては多大なリスクが伴います.そこで注目されているのが超小型人工衛星です.活動を通じて宇宙をより身近なものにするというのが,私たち「結」の最終目標です.
(なお,私たちが開発しているのは超小型人工衛星の中でもCubeSatと呼ばれるものです.)
各系の活動紹介
「宇宙工学は総合工学」という言葉があります.現在,星の数ほどある学問分野ですが,宇宙工学ほど様々な分野の知識が要求される分野はなかなかないでしょう.そのため衛星開発においては,要求される学問分野に応じていくつかのチームに分かれて活動をおこないます.このチームのことを「系」と読んでいます.「結」では,姿勢制御系,通信・C&Dh系,熱・構造系,電源系,の4つの系で活動を行なっています.
各系ごとの活動紹介の動画を用意しました.自分の興味のある系だけでも見ていただけると幸いです.
【姿勢制御系】
姿勢制御系は,読んで字のごとく衛星の姿勢を制御する系です.力学等に興味のある方はこの系がおすすめです.
【筑波大学】「結」プロジェクト活動紹介 姿勢制御系篇【学園祭2021】 - YouTube
【通信・C&Dh系】
通信・C&Dh系は,通信系とC&Dh系が合わさったものです.通信系は,衛星と地上との通信を考えます.無線技術やアンテナに興味がある方はこの系がおすすめです.C&Dh系は衛星のプログラミングをしている系です.プログラミングに興味のある方はこの系がおすすめです.
【筑波大学】「結」プロジェクト活動紹介 通信・C&Dh系編【学園祭2021】 - YouTube
【熱・構造系】
熱・構造系は,熱系と構造系が合わさったものです.熱系は,宇宙の厳しい熱環境に耐えられるような衛星の設計を考えます.熱力学等に興味のある方はこの系がおすすめです.構造系は,ロケットなどの衝撃に耐えられるような衛星の骨組みなどを考えます.材料力学等に興味のある方はこの系がおすすめです.
【筑波大学】「結」プロジェクト活動紹介 熱・構造系篇【学園祭2021】 - YouTube
【電源系】
電源系は,衛星についている太陽光パネルの発電量を計算し,その限られた電力をどのように使うかを考える系です.回路設計などに興味のある方はこの系がおすすめです.
【筑波大学】「結」プロジェクト活動紹介 電源系篇【学園祭2021】 - YouTube
「結」プロジェクトの人材育成
上述の通り,超小型人工衛星は今注目の研究分野です.実は,私たちのように超小型人工衛星を製作している学生団体は数多くあります.そんな中,私たち「結」では
- 民生品を使用して衛星を製作することで,より簡単に衛星が作れるようにする
- より多くのデータ量を扱える通信方法を確立する
- 宇宙工学をはじめとする理系分野で活躍できる人材を育成する
の3つを目標として掲げています.特に3つ目の人材育成に注力しています.
一般的な日本の理系大学生は,1〜3年次に基礎知識を学び,4年次に研究室に配属され,初めて研究を行います.つまり「大学生」と言っても1〜3年次までは高校生とほぼ変わりません.勉強内容が少し難しくなるだけです.「本当の学問は大学院から始まる」とおっしゃる教授もいるくらいです.しかし,もっと早い時期から研究を始めたいという学生もいるので,多くの大学では研究室への体験配属のようなものができる制度があります.筑波大学では「ARE」という制度がそれにあたります.
「結」プロジェクトはAREに似ています.1〜3年次で学習していることを,人工衛星開発に活かします.AREとの相違点はまず,学生が教える立場であることです.先輩方から様々なことが学べますが,先輩方もわからないことが多々あります.そのため,学びつつ実践していく,ゼミのような形で活動しています.相違点の二つ目は,学生が運営しているという点です.「結」では衛星設計の基本的な知識の他に,皆で一つのプロジェクトを進めていくマネジメントの経験も積むことができます.
また,「結」では宇宙工学が総合工学であることを生かし,自分が興味のある分野のみを学習することができます.力学に興味がある人は姿勢制御系に,回路設計に興味のある人は電源系で活動することができます.どの系がいいかわからない人のために,新入生教育を各系で実施しています.そのため,新入生の方々は,とりあえずいくつかの系で新入生教育を受けた上で,自分の興味のある系を選択できます.実はこうすることで,幅広い分野の知識を軽く身につけることができ,衛星開発の際にも役に立ちます.
アネモネプロジェクト
さて,ここからは少し難しい話になります.上記の動画でも解説したとおり,人工衛星には全てミッションがあります.現在,私たちは超小型人工衛星「ITF-3」の開発を目指しており,その開発に付随する活動をアネモネプロジェクトと呼称しています.
ITF-3のミッションとして
- 人工衛星による動画の撮影および動画の伝送
- 磁気トルカを用いた能動的姿勢制御
- 10cm×10cm×20cmの大きさへの挑戦
の3つを掲げています.
動画の伝送について,そこまで難しいミッションでないと感じられるかもしれません.しかし,衛星と地球との距離が400kmとあまりにも遠いことや,通信に使用できる周波数帯などの関係で,従来の超小型人工衛星では動画のような容量の大きいデータを送受信することはできません.そこで,私たち「結」ではこれまであまり使われてこなかった5.8GHz周波数帯を使用することで,この問題の解決を目指しています.
では,なぜ5.8GHz周波数帯はこれまで用いられてこなかったのでしょうか.それは,この周波数帯を使用して通信を行う場合,衛星のアンテナを高精度で地上のアンテナに向けなければならないからです.そのため,衛星が自ら姿勢を制御する能動的姿勢制御が必要となります.能動的姿勢制御を行う際には,一般的にリアクションホイールというものが使用されます.これは,コマのようなものを回転させることで姿勢を安定させる装置なのですが,今回はこれを使わず,磁気トルカのみを用いた制御を目指しています.
以上の大容量データ送信や,高精度姿勢制御のため多くの電力が必要と判断し,太陽光パネルによる発電量を増やすため,従来の2倍の大きさの超小型人工衛星の開発に挑戦します.これにより,例えば熱・構造系ではより強固な骨組みの設計などが必要になり,電源系ではより安全に多くの電力を蓄えられるバッテリーの選定が必要になります.
また,Pumpkin社の実際に宇宙へ行ける人工衛星を用いて,リバースエンジニリアリング的な研究も行っています.これは今年の夏に始まったばかりのプロジェクトであり,主に骨組みの強度を計算したり,回路の強度の確認などを現在行っております.
最後に
「結」プロジェクトに興味を持った方は,是非HPも見てみてください.
「結」プロジェクトHP:https://yui.kz.tsukuba.ac.jp/
※「結」プロジェクトは亀田敏弘教授の元,活動させていただいております.亀田教授の意向により生徒主体の活動をしています.
※コロナ禍ではオンラインを中心に,感染症対策を十分に講じた上で活動をしております.
